あなたの研究テーマについて教えてください。What is your research theme?

私の研究テーマは「MgZnO強誘電体薄膜のウルツ鉱型結晶配向性の制御：製造条件の最適化と段階ドーピング」です。
現在、半導体業界では「メモリウォール」という課題に直面しています。これは、データの記憶速度が演算速度と比べて遅く、かつ記憶時の消費電力が演算時より著しく高いという問題です。この問題は、チップの集積化や微細化を進める上で大きな障壁となっています。

私の研究では、2019年に強誘電性が初めて発見されたウルツ鉱型構造材料に着目し、薄膜の製造プロセスと結晶成長の最適化を通じて、強誘電性や電気特性を精密に制御することを目指しています。最終的には、この改良された強誘電体薄膜を電界効果トランジスタ（Field Effect Transistor, FET）デバイスに組み込み、メモリ・演算統合デバイス、多値出力、ニューロモーフィック演算などの実現を目指しています。

特筆すべき点として、2025年にサリー大学と共同開発予定の強誘電体マルチモーダル・メモリトランジスタ（Ferroelectric Multi-Modal Memory Transistor, FeMMT）があります。このデバイスはエッジコンピューティングにおけるニューロモーフィック演算を可能にし、ポータブルデバイスやオフラインAIの大規模モデル処理能力を大幅に向上させることが期待されています。

なぜ博士課程へ進学しましたか？Why did you decide to pursue a doctoral program?

修士課程での研究活動は、既存の輪郭に色を付けていくような作業だと感じています。確かな基礎知識、創造性、そして持続的な努力が必要とされます。

一方、博士課程は白紙のキャンバスに絵を描くようなものです。全体を見通す力、細部への配慮、そして比類のない創造性が、研究成果を左右する重要な要素となります。

将来的に、私は研究者として自身の専門分野で活躍し続けたいと考えています。その目標を実現するためには、博士課程での経験が不可欠だと確信し、進学を決意しました。

Graniteの支援で役立っている・助かっていることを教えてください。Please share what has been helpful or beneficial through the support provided by Granite.

まず、Graniteの温かい経済支援に心より感謝申し上げます。この支援のおかげで、生活面と研究活動における安定性が確保され、研究を円滑に進めることができています。

Graniteは研究成果の実用化に重点を置いた活動を通じて、学術研究と企業ニーズを橋渡しする貴重な機会を提供しています。このような産学連携の経験により、純粋な学術研究と企業応用の間にあった私の認識ギャップを効果的に埋めることができました。

また、国際会議への参加、語学研修、協力校でのインターンシップなど、国際的な学術交流の機会が豊富に用意されています。これらの活動を通じて、研究者が世界規模で活躍し、先進的な知見を得ることができます。私自身も2025年1月にブリスベンで1ヶ月間の英語研修に参加する予定です。

将来の目標、もしくはあなたが胸に秘めた野望があればぜひ教えてください。Please share your future goals or any ambitions you hold close to your heart.

私は日本の半導体関連企業の研究部門に入り、現在の研究テーマを継続して追求していきたいと考えています。純粋な学術研究も重要ですが、自分の研究成果が製品として具現化され、社会に貢献していく過程に携われることは、研究者として大きな喜びであると考えています。

2022年末のChatGPTの登場以降、AIの時代が本格的に幕を開けたと感じています。
私たちは今まさに、新しい時代の入り口に立っていると言えるでしょう。しかし現在のAI応用は、ハードウェアの性能やネットワーク転送速度などの制約により、その可能性を十分に発揮できていません。
将来的には、クラウドサーバーに依存した現在のAIモデルから、オフラインで動作する高性能なローカルAIモデルへの移行が進むと考えています。これにより、より高速なレスポンス、より個性的な対話、より豊かな利用シーンが実現可能となり、サービスロボットの普及にも大きく貢献するでしょう。

この技術革新の過程に、研究者として参画できることは私にとって大きな意味を持っています。日々進化するAI技術が私たちの暮らしをより豊かにしていく、その歩みの一端を担えることは研究者冥利に尽きると感じています。自身の研究を通じて、この新たな未来の実現に向けて精進していく所存です。

博士課程進学を考えている人へのメッセージをください。Please share a message for those considering pursuing a doctoral program.

一度でも博士課程に進学したいと思った人はその考えを誰かに相談し、自分の中で後悔しないような選択をしてほしいと思います。