あなたの研究テーマについて教えてください。What is your research theme?

私の研究テーマは 「ソフトウェアアップデートの数理モデル化とその最適化」に関するものです。
現代社会では、 スマートフォンやパソコンだけでなく、 自動車や医療機器、さらにはインフラ機器に至るまで、ソフトウェアが組み込まれたシステムが広く普及しています。これらのシステムは、セキュリティや機能改善のために継続的なアップデートが不可欠ですが、アップデートの頻度や方式を誤ると、ユーザーに負担をかけたり、サービスの停止や大規模障害を招いたりするリスクがあります。そこで私は、アップデートの到着過程やシステム全体の稼働状況を数学的にモデル化し、マルコフ過程や待ち行列理論などの手法を用いて、 「どのようなアップデート戦略が安定性・効率性・信頼性を最大化できるか」を解析しています。 シミュレーションも併用することで、 実際の大規模システム運用に近い条件で検証を進めています。学術的には、この研究は「ソフトウェア更新を動的システムの制御問題として捉える」新しい枠組みを提示する点に意義があります。数理モデルによる理論解析と、システム設計上の課題を結びつけることで、ソフトウェア工学と応用数学の接点を切り拓くことを目指しています。社会的な影響としては、より安全で持続可能なソフトウェア運用を可能にし、セキュリティリスクの低減やシステム停止コストの削減につながると考えています。例えば自動運転車や医療機器のように高い信頼性が求められる分野において、最適なアップデート戦略を導入することは、社会全体の安心・安全を支える基盤技術になるはずです。
なぜ博士課程へ進学しましたか?Why did you decide to pursue a doctoral program?

私は修士課程でシステムの数理モデリングに取り組む中で、 研究を進めれば進めるほど「理論と実社会をつなぐための課題」が数多く残されていることを強く実感しました。 修士課程での研究では、応用事例の分析として一定の成果が得られました。しかし私はそこで満足するのではなく「理論をさらに洗練し、 実社会に適用可能な形で体系化すること」が学術的にも社会的にも重要だと感じ、より深い研究へ挑戦する道を選びました。 博士課程への進学を決断したのは、こうした課題への探究心が一番の理由です。また 社会の多くのシステムが高度にソフトウェアに依存する現代において、安定した運用を数理的に裏づける研究は、学術的にも社会的にも大きな意味を持つと確信し、 長い時間をかけて研究に取り組む覚悟へとつながりました。さらに、 博士課程に進むことで、 自分の専門性を深めるだけでなく、 将来的には教育や産業界との共同研究を通じて「数理モデルの知見を社会に還元できる立場」になりたいとも考えました。 修士課程まででは得られない「自立した研究者としての訓練」を経ることで、 学術と実社会を橋渡しできる人材になることを目指しています。
Graniteの支援で役立っている・助かっていることを教えてください。Please share what has been helpful or beneficial through the support provided by Granite.
まず経済的な支援は、 博士課程で研究に集中するために非常に大きな意味を持っています。 生活費や学費への過度な心配を和らげていただいていることで、長期的な視点で研究計画を立て、腰を据えて研究テーマに取り組むことができています。また、Graniteでは経済的な面だけでなく、就労支援やキャリア形成を意識したプログラムがあることも心強いです。博士課程で培った専門性を社会にどう還元できるのか、その道筋を具体的に描けるようになることは、自身のキャリアを考える上で非常に貴重な機会だと感じています。
このようにGraniteの支援は単なる経済的な援助にとどまらず、博士課程を充実して過ごし、将来を見据えた成長につなげるための総合的な後押しになっていると感じています。
将来の目標、もしくはあなたが胸に秘めた野望があればぜひ教えてください。Please share your future goals or any ambitions you hold close to your heart.
私の将来の目標は、研究と教育の両面で社会に貢献できる研究者となることです。博士課程で培った専門性をさらに発展させ、大学教員として数理モデリングやシステム設計の研究を進めるとともに、学生の教育や研究指導にも力を注ぎたいと考えています。特に自分自身が博士課程で感じている「研究は挑戦の連続であるが、その中で新しい発見に出会える喜びがある」という経験を次世代の学生にも伝えていきたいです。
数学的な理論やモデルの追究は一見抽象的に見えますが、社会の安全や持続可能なシステム運用に直結する大きな力を持っています。その魅力を教育を通じて広め、研究者の卵を育てることが私の野望の一つです。
また、研究面では学術的な理論構築にとどまらず、産業界や社会課題と結びつけることで実装可能な知見を提供できる研究者を目指しています。「理論と実践の架け橋」となる存在となり、教育・研究・社会実装の三つを有機的に結びつけられることが将来の大きな目標です。
博士課程進学を考えている人へのメッセージをください。Please share a message for those considering pursuing a doctoral program.

博士課程に進学するということは、長い時間をかけて一つのテーマに腰を据え、自分だけの研究を深めていくことを意味します。その分だけ大変な挑戦ではありますが、自分が本当に探究したい問いに取り組み、学術的にも社会的にも新しい価値を生み出せる貴重な機会でもあります。
進学を考えている段階で大切だと思うのは、研究に集中できる環境であるかをあらかじめ見極めることです。経済的な基盤や研究室との相性など、研究以外の部分が安定しているほど、 自分のエネルギーを研究に注ぐことができます。 Graniteをはじめとする博士後期課程学生支援制度や、 それに係る多様なサポート体制は、 まさにその環境を整えるための大きな支えになっています。
また、 博士課程では思い通りに進まない時期も必ずありますが、 その時に支えてくれる仲間やコミュニティの存在も大きな力になります。 互いの研究や経験を共有し合える環境が、 長い研究生活を乗り越えるための安心感につながります。
博士課程は確かに険しい道ですが、 その分、 自分の探究心を形にできる特別な時間です。「自分は研究に本気で向き合いたい」と思えるのであれば、 ぜひ挑戦してみてほしいと思います。

