Granite採択学生インタビュー

Biological Science

Granite バイオサイエンス領域

分子免疫制御研究室上利 如月子さん

あなたの研究テーマについて教えてください。What is your research theme?

25-13-01

遺伝子の変異が原因で発症する遺伝性の病気で、自己炎症性疾患の1種である「家族性地中海熱」の解明です。この病気は国の指定難病であり、患者数は非常に少なく、原因タンパク質がどういったメカニズムで病気を引き起こしているのかがまだ解明されていません。私自身も類似の自己炎症性疾患を患っているという個人的な理由から、このテーマに深く関わることを決めました。

私の疾患はすでに原因がはっきりしていますが、類縁疾患である家族性地中海熱に関してはまだ研究が進んでいない現状があります。病気の原因を突き止めることはもちろん、研究成果が診断期間の短縮につながることも目標の1つです。

なぜ博士課程へ進学しましたか?Why did you decide to pursue a doctoral program?

25-13-02

博士課程への進学を決めたのは、修士の2年間では納得のいく研究ができないと判断したからです。多くの大学の先生方からも、修士の2年間は就職活動などで研究に集中できる時間が限られていると伺いました。

私は、自身の疾患と向き合う中で、免疫分野を深く学びたいという思いを抱きました。学部時代、院進学を検討する中で、自分の病気はすでに研究が進んでいることが分かりました。しかし、最初に疑われていた家族性地中海熱の研究はまだ進んでいないことを知り、この病気の研究ができる場所として今の研究室を選びました。このテーマに修士の頃から一貫して取り組むため、計5年間研究できる博士課程への進学を決めました。

私の両親も博士号を持っており、博士課程に進むことへの心理的なハードルはあまりありませんでした。しかし、両親は病気のこともあり、研究生活の大変さを心配して反対しました。それでも最後は「自分の人生だから自分で決めなさい」と背中を押してくれました。

Graniteの支援で役立っている・助かっていることを教えてください。Please share what has been helpful or beneficial through the support provided by Granite.

Graniteの支援で最も助かっているのは、生活費と研究費の援助です。大学院生で収入がないことは大きな不安でしたが、Graniteから生活できる水準の給与をいただくことで、親からの金銭的援助なしで学生生活を送れています。また、年間40万円の研究費も非常に助かっています。免疫学の研究では試薬が高価で、1つで10万円を超えることも珍しくありません。この研究費のおかげで、実験を進める上で大きな助けとなっています。

学部生の頃は学振しか知りませんでしたが、今の研究室に見学に来た際に、先輩方からGraniteのようなフェローシップ制度があることを教えてもらい、経済的な不安が軽減され、安心して進学を決めることができました。

経済的な支援以外にも、国際的な学会やワークショップに参加するプログラムが用意されていることもありがたいです。今はまだ研究成果が十分ではないので利用できていませんが、同じ支援を受けている先輩方がこのプログラムを活用して交流を広げているのを見て、将来的に利用したいと考えています。

将来の目標、もしくはあなたが胸に秘めた野望があればぜひ教えてください。Please share your future goals or any ambitions you hold close to your heart.

将来の目標は、製薬企業に就職し、希少疾患、特に自己炎症性疾患の研究に携わることです。アカデミアでは研究費の長期的な確保が難しく、やりたい研究を続けられる保証がないと感じています。一方、企業であれば、一度研究が決まれば継続して取り組むことができます。

患者数が少ない希少疾患の研究は、なかなか進展が難しい分野ですが、私の病気と同じような疾患を持つ患者さんを救いたいという強い思いがあります。同じ病気で幼くして亡くなる人、あるいは身体障害や発達障害を抱える人がいる中で、少しでも多くの人が手に取れるような薬を作りたいと考えています。現在、私の病気を含めた自己炎症性疾患の多くは治療薬があるものの、年間の医療費が1,000万円を超えるほど高価です。国の難病制度がある日本は恵まれていますが、世界にはそうでない国も多いです。そのため、より安価で多くの人が使えるような薬を開発することにも興味があります。

博士課程進学を考えている人へのメッセージをください。Please share a message for those considering pursuing a doctoral program.

25-13-03

博士課程は、明確な目標や揺るがない信念がないと非常に厳しい世界です。一緒に進学した仲間でも、途中で挫折してしまう人も少なくありません。だからこそ、自分の人生で何をしたいのかをよく考えてから決断してほしいと思います。

博士課程は、自分で研究をリードし、成果を上げていくことが求められます。修士課程が先生についていく段階だとするなら、博士課程は先生のように、後輩を引っ張りながら研究を主導する段階です。

もし、どうしてもやりたいことがあって、そのために博士課程が必要だと感じているなら、ぜひ進学してほしいです。目標さえあれば、同じように頑張っている仲間と助け合い、苦労を分かち合いながら乗り越えることができます。博士号は3年間頑張っても取得できない人もいる、そんな厳しい世界であることを理解した上で、それでも「絶対にやり遂げる」という強い気持ちを持ってきてくれる人と一緒に頑張りたいです。