あなたの研究テーマについて教えてください。What is your research theme?

研究タイトルは『ろう・難聴者のための音源定位と識別を可能にする振動触覚デバイス』です。
私は、日常生活で発生する音の「方向」と「種類」を同時に触覚で提示するウェアラブルデバイスの研究を行っています。現在は、帽子型の試作機を制作しており、頭部に装着した振動子を用いて、前・後・左右前後の6方向から音が発生した位置を提示できるようにしています。ろう・難聴者は音の方向や種類を判断することが難しく、その結果、警報音に気づけなかったり、背後から接近する車を認識できないといった危険な状況が生じます。本研究では、音を振動に変換して提示することで、これらの課題を解決し、ろう・難聴者がより安全に生活できる環境を実現することを目指しています。さらに、触覚を通じて周囲の音環境の理解を促進することで、社会参加や日常生活の自由度を高める可能性があると考えています。
なぜ博士課程へ進学しましたか?Why did you decide to pursue a doctoral program?

私自身、片耳難聴で音の方向を判断しづらく、聞こえない方向からの音を理解できずに不便さを感じる経験をしてきました。こうした体験から、ろう・難聴者が直面する課題を強く意識するようになり、研究を通じてその解決に取り組みたいと考えるようになりました。修士課程では、音の方向や種類を提示するデバイスの開発・検証を行いましたが、その過程でこの分野には依然として多くの未解決課題があることを実感しました。そこで、より体系的かつ実用的に研究を発展させるため、博士課程へ進学する決意を固めました。(さらに博士課程に進むこと自体に魅力やかっこよさを感じていたことも、進学を決意する後押しとなりました。)
Graniteの支援で役立っている・助かっていることを教えてください。Please share what has been helpful or beneficial through the support provided by Granite.
生活費の支援はもちろん大きな助けになっていますが、それ以上に、自分の研究が社会に役立つかもしれないと認めていただけたことが大きなモチベーションにつながっています。研究を続けていく上での自信や励みとなり、より一層前向きに取り組むことができています。
将来の目標、もしくはあなたが胸に秘めた野望があればぜひ教えてください。Please share your future goals or any ambitions you hold close to your heart.
私の野望としては、誰もが音を“感じる”ことができる世界をつくることです。私は研究活動と並行して音楽活動も行っており、音には人の感情や行動を大きく動かす力があると実感しています。しかし、耳で聞くだけでは音にアクセスできない人も多くいます。そこで、触覚を通じて音を伝える研究を発展させることで、「耳で聞く」だけに依存しない、新しい音の楽しみ方や安全な生活を実現したいと考えています。研究と音楽活動の双方で培った経験を活かし、音を“聞く”から“感じる”へと拡張することで、誰もが音の世界に参加できる社会を目指したいです。
博士課程進学を考えている人へのメッセージをください。Please share a message for those considering pursuing a doctoral program.

博士課程は、自分が「やりたい」と思ったことに思いっきり取り組める、最後の貴重な時間だと考えています。進学か就職かで迷うこともあると思いますが、そのときは「就職した自分」と「博士課程に進んだ自分」のどちらがよりワクワクするかで考えてみるとよいと思います。
また、Graniteのような支援もあるため、金銭的な不安だけで進学をあきらめてしまうのはもったいないと感じます。迷うことは自然なことですが、最終的には自分の気持ちに正直に向き合って選んでほしいと思います。

