あなたの研究テーマについて教えてください。What is your research theme?

私は、植物、特にイネの共生菌を社会実装することをテーマに研究を行っています。研究室でイネの成長を促進させる20種類ほどの共生菌を単離・同定しており、これらの共生菌をブレンドして、さまざまな機能を持つバイオスティムラント資材を開発しています。
バイオスティムラント資材とは、植物や土壌により良い生理状態をもたらす様々な物質や微生物を用いた新しい農業資材です。使用方法によって、肥料や農薬の代替として使われることもあります。私は、この研究を通して、肥料や農薬にあまり頼らない、自然に優しい農法の実現を目指しています。
なぜ博士課程へ進学しましたか?Why did you decide to pursue a doctoral program?

学部生の頃から農業に関わっており、修士課程修了後はIT企業で働きながら、農業体験イベントを企画する会社を立ち上げつつ副業という形で続けていました。その中で、農家の方々から土壌微生物や共生菌について質問されることが多く、自分の修士課程での知識だけでは十分に答えられないと感じる場面がありました。農家の方々が微生物の世界に強い関心を持っているにもかかわらず、そのメカニズムがまだブラックボックスであり、理解が難しい現状を目の当たりにし、「もう一度、しっかり勉強し直そう」と決意し、博士課程への進学を決めました。
子どもの頃から自然環境が好きで、地球温暖化や環境破壊に対して強い問題意識を持っていました。大学で初めて畑を開墾した際、微生物を活用した栽培方法で人間の食べ物が作れることを知り、「農業は、人間と自然が共存できる方法なのではないか」という衝撃を受けました。この時の思いが、今も研究を続ける原動力となっています。
Graniteの支援で役立っている・助かっていることを教えてください。Please share what has been helpful or beneficial through the support provided by Granite.
Graniteの支援は、私の生活と研究の両面で非常に役立っています。経済的な面では、生活費をすべてGraniteの支援で賄っているため、安定して研究に集中できています。また、研究費としても自由に使いやすく、とても助かっています。
さらに、金銭面以外でもメリットを感じています。入学してすぐに研究テーマを固める必要があったのですが、Graniteの申請プロセスを通じて、指導教員と密に連携し、研究内容の把握やテーマ設定をスムーズに進めることができました。また、NAISTのアントレプレナー育成プログラム「GEIOT」や、Granite関連のイベントに参加することで、他分野の先生方や学生とのつながりが広がり、研究費に関する情報など、プラスアルファの情報を得られる機会が増えました。このような人脈は、NAISTだからこそ得られるものだと感じています。
将来の目標、もしくはあなたが胸に秘めた野望があればぜひ教えてください。Please share your future goals or any ambitions you hold close to your heart.
私の目標は、研究と農業現場のギャップを埋める存在になることです。
昔は「日本の農業を変える第一人者」になりたいと思っていましたが、博士課程に進学してからは、研究室で解明された素晴らしい技術が、必ずしも現場に直結するわけではないという現実を知りました。研究は興味を深く追求する場であり、現場は効率や実践を重視します。この両者は時に相容れないものです。
しかし、私は「研究側」と「現場側」の双方を理解しているからこそ、その間を取り持つ役割を担えるのではないかと考えています。将来的には、研究の成果を現場に落とし込み、持続可能な農業を実現したいです。そして、私と同じように、研究と現場の両方に興味を持つ人々を繋げ、一緒に活動できるようなコミュニティを作りたいと考えています。
子どもの頃から「自然が好き」という気持ちはブレていません。これからも、自然と共に、研究と実践を両立する生き方を追求していきたいです。
博士課程進学を考えている人へのメッセージをください。Please share a message for those considering pursuing a doctoral program.

「何をやりたいか」を見つけましょう、という社会の風潮に苦しさを感じている人もいるかもしれません。でも、無理に「これだ!」と断定する必要はありません。まずは「これかな」と思うことを見つけ、それを突き詰めてみてください。博士課程は、その「これかな」と思う好きなことをとことん追求できる場所です。
社会人を経験してから博士課程に戻るのも、素晴らしい選択肢です。一度社会に出てみて「やっぱり違った」と思っても、NAISTのような大学院大学は戻りやすい環境です。「みんなが働いているのに自分は学生でいいのかな」と悩む必要はありません。人生は自分で決めるものです。一度就職してみるのも良い経験ですが、もし「博士課程に進学したい」という気持ちが少しでもあるなら、その気持ちに従って行動してみてください。きっと幸せな時間の過ごし方を見つけられるはずです。

