Granite採択学生インタビュー

Information Science

Granite 情報科学領域

情報セキュリティ工学阿部 虹稀さん

あなたの研究テーマについて教えてください。What is your research theme?

25-38-01

ハードウェアへの物理攻撃時に生じる電気的変化に着目した対策技術に関する研究をしています。セキュリティといったらサイバー対策などが思いつくかと思いますが、オープンキャンパス時に今の研究室が物理層におけるセキュリティ確保の研究をしているのを見て、一般的なセキュリティの研究とは異なる視点での研究内容に興味を持ったのがきっかけです。

情報システムを支える土台であるハードウェアのセキュリティ確保はきわめて重要です。ハードウェアは情報を電気信号として扱うため、電気信号の計測や操作、改ざんといった物理的な攻撃の脅威にさらされています。これらの攻撃は、電磁波による盗み見(電磁計測)、電磁的な妨害、回路そのものの改変に分けられ、従来はそれぞれの仕組みに応じた個別対策が提案されてきました。

一方で、このような攻撃の最中には必ず電気的な特性に変化が生じます。私の研究はこの「電気的な変化」そのものを検出対象とすることで、攻撃の種類に依存しない、より根本的な防御を実現しようとするものです。具体的には、攻撃時に現れる微小な電気的変化を高感度に捉え、解析する手法を開発し、機器の種類や攻撃手法に左右されにくい共通の物理攻撃対策として適用することを目指しています。

なぜ博士課程へ進学しましたか?Why did you decide to pursue a doctoral program?

25-38-02

就職後の仕事も研究と同じプロセスで問題解決が進むと理解をし、その型を就職前に確かな習慣として身に着けたいと考えたからです。

元々、学部時代から修士にかけてアルバイトをしている中で、プロジェクトマネージャー的な立場で店舗課題を解決していく役割を担ったことがあります。その際、仮説、検証などのサイクルが研究活動と類似していることに気が付き、社会に出た後も研究活動で身につく基礎能力は活かせると感じました。

そもそも研究プロセスは、課題の抽出・定義、仮説の構築、実験の計画の作成、実験結果の評価、考察および改良案の模索、そして成果の発信という一連の流れです。私は、この「問題解決の型」を形式知としてだけでなく日々の実践に落とし込み、暗黙知も含めて体得したいと考えました。そうして、短期的な成果に左右されず本質的な課題と向き合う姿勢を身に着けることが、将来どの職種・領域でも通用する基盤になると思います。

博士課程は、このプロセスを身に着けるのに最も適した環境だと考えています。就職後の現場ではミスの許容範囲が狭く、結果として試行錯誤の幅が限定されがちです。一方、博士課程では研究に専念できる時間と裁量が確保され、固定概念にとらわれない柔軟な発想のもとで仮説を素早く試せます。その過程で生じる思いがけない失敗や成果を、検証と振り返りを通じて経験値へと転化できる点は、就職後では得難い価値だと考えています。

Graniteの支援で役立っている・助かっていることを教えてください。Please share what has been helpful or beneficial through the support provided by Granite.

Graniteのご支援は、生活面と研究の双方で大いに助かっています。生活面では、日々の生活費や学内外の交流に伴う費用に充てられるほか、授業料免除の措置もいただいており、経済的負担が軽減されています。交流会に関しても、ちょうど2週間前にオーストラリアでの研修に参加させていただき、視野が広がる機会でした。

研究面では、生成AIのサブスクリプション、クラウドストレージ等のクラウドサービス、英文校正アプリケーションのサブスクリプションに充当しています。

ご支援をいただくことで、研究に集中できる環境があることが非常にありがたいです。

将来の目標、もしくはあなたが胸に秘めた野望があればぜひ教えてください。Please share your future goals or any ambitions you hold close to your heart.

セキュリティに関する研究をしているので、そういった分野には興味があるものの、現時点では明確な目標はまだないです。まずは博士課程をしっかり修了し、これまで支えていただいた分以上の価値を、社会に返せる人間になりたいと考えています。

博士課程進学を考えている人へのメッセージをください。Please share a message for those considering pursuing a doctoral program.

25-38-03

進学を考えたときにやっていけるかの不安はありましたが、私の性格的に「なるようになる」精神で進学を決めました。

そもそも、博士課程に進学をしなくても、普通に就職をして生活をしていくことは十分に可能であり、必須ではありません。

一方で自己研鑽を徹底したい方や、世界の第一線で活躍をする「本物の天才」に直接会って日常では得られない刺激を受けたい方にとっては、有力な選択肢だと思います。これらの点を踏まえ、ご自身の価値観や将来像と照らし合わせて進路を選択いただければ幸いです。