Granite採択学生インタビュー

Granite-AI

Granite-AI

計算神経科学研究室吉田 雄丸さん

あなたの研究テーマについて教えてください。What is your research theme?

25-50-01

私は「脳と人工知能における注意メカニズムの類似性の検討」というテーマで研究を行っています。

最近はTransformerという深層学習のアルゴリズムが、大規模言語モデル (LLM) などあらゆる分野で用いられています。皆さんもLLMを利用したことがあるかもしれませんが、まるでそこに人間が潜んでいるかのように言語や画像の処理を行うことが見て取れます。しかし、Transformerと人間の脳がどのように関係しているかはわかっていません。そこで、Transformerなどの深層学習モデルが人間の脳とどのように類似し、異なっているかを解明することが必要になってくるのです。特に、注意というメカニズムは両者において不可欠な要素であるため、橋渡しとして最適だと考えました。

これは 2 つの学術的・社会的意義をもたらします。まず、脳との相違点が判明した側面をさらに脳の処理に近づけていけば、人間のように低エネルギーかつ持続的で、環境の変化にも柔軟に対応できる人工知能の開発につながる可能性があるのです。2 つ目に、深層学習との類似点を解明することで、人間の脳がどのように働いているのかを類推することができるようになります。このようにして、この研究が神経科学と人工知能開発を後押しするものになると感じているからこそ、情熱を賭して解明したいと思えるのです。

なぜ博士課程へ進学しましたか?Why did you decide to pursue a doctoral program?

25-50-03

今後の世界において、博士としての知識や経験がより価値の高いものになるだろうと見込んだからです。

修士課程の入学当初は、博士課程に進学するつもりはありませんでした。しかし、IT 企業の方々から話を聞いたり、LLM の発展を眺めているうちに、これからは人間らしいクリエイティブさが重宝されるのではないかと予感しました。私はもともと創作活動をしていましたから、新しい世界観を考えることは好きですし、現行の生成 AI は人間らしい創意工夫という観点で乏しい印象があります。そのため、私の創造性が今後の世界経済において重宝される可能性があるならば、その博打に対して躊躇いはありませんでした。

そしてなにより、博士ってかっこいいですしね。

Graniteの支援で役立っている・助かっていることを教えてください。Please share what has been helpful or beneficial through the support provided by Granite.

やはり経済的な支援に大いに助けられております。またそれ以外にも、現在はまだ利用しておりませんが、キャリア支援について利用させていただきたいと考えています。

そのような支援も充実していることは、今後の選択肢を広げる上で非常に安心できます。

将来の目標、もしくはあなたが胸に秘めた野望があればぜひ教えてください。Please share your future goals or any ambitions you hold close to your heart.

私はより人間らしく振る舞う人工知能を開発し、彼らが仮想世界の中でいかに文明を構築していくのか、眺めてみたいと思っています。これは学術的・社会的意義など関係ありません。ただ、いつしか夢に見るようになった仮想世界を、自分の手で形にしたいというだけの野望です。

私はそうした、物語の裏側にあるひとつひとつの存在が好きなんです。人間や動物にかかわらず、彼らの感情や意思といった数々が物語を強烈に動かしていくさまを、世界でもっとも美しいとすら感じます。その美しさの極致を描き出すことが最終的な目標です。

博士課程進学を考えている人へのメッセージをください。Please share a message for those considering pursuing a doctoral program.

25-50-02

皆さん、SF はお好きでしょうか?物語の中、科学が彩る未来のあり方に魅せられて、科学技術の門戸を叩いた方も多いのではないでしょうか。

現在、人工知能の発展によって世界は大いに盛り上がっています。10 年前を思い返してみると、このように秀でた人工知能は SF の話でしかないと感じられていたような気がします。とすると今後、世界は皆さんの研究によって SF の世界を現実に表現することが可能になるかもしれません。それは、皆さんのアイデア次第です。

そうならなくとも、世界がどのように変革していくのか、科学を極めていく中で観察してみるのは非常におもしろいものです。科学文明の行末を見届けるとともに、その片隅に自分も加わっています。それを経験できるのも、博士課程という環境です。

そうした諸々を踏まえて、自分のやりたいことだけでなく「自分がどうありたいか」を考えてみるのは一興です。自分を SF の主人公として未来を空想すると、人生の道も切り拓けるものだと私は考えています。この人生の主人公は自分にほかならないのですから。