博士学生キャリアパス

博士の民間企業就職、何から始める?

博士課程の学生にとって、就職活動は大きな転機です。特に民間企業への就職を考えている場合、アカデミアとは異なる戦略が必要です。本記事では、博士学生がスムーズに就職活動を進めるためのポイントを紹介します。

博士学生の就職活動スケジュールを知ろう

博士学生の就職活動は、一般的な学部・修士学生と共通する部分もあれば、特有の部分もあります。学部・修士学生と比較し自由度が高い面もありますが、各種の締切を逃さず計画的に進めることも重要です。主なスケジュールは図のようになります。

図 博士課程の就職活動スケジュールの例(3月修了の場合)

学部・修士学生と共通する部分

近年の傾向として、業界・職種ごとに選考時期がばらけ、就職活動の長期化・早期化が進んでいます。また、夏季インターンシップから選考に直結するタイプの採用活動が年々増加する傾向にあります。

博士学生特有の部分

もっとも大きな特徴として、「企業就活のハイシーズンとアカデミア就活のハイシーズンに1年近い時期の差がある」という点が挙げられます。このことから、原則として企業就活とアカデミア就活は並行して行えないケースも多いことに留意してください。

その他、製薬系や化学系の研究開発職など、業界によっては博士学生対象の早期選考がある場合があります。また、一般的な新卒一括採用だけでなく、キャリア採用(中途採用)の枠組みで新卒博士を採用する企業も存在します。その際、博士課程での研究内容・研究経験との親和性がより強く求められる傾向にあります。

また、博士学生は学会への参加や論文投稿、学位審査等のスケジュールとの調整が必要となるため、余裕をもった計画が不可欠となることもポイントです。

企業、アカデミアそれぞれの就活

博士課程修了後のキャリアの2大選択肢とも言える企業就職とアカデミア。それぞれの就職活動の進め方は大きく異なります。自分の志望するキャリアの就職活動の特徴を理解し適切な対策を行いましょう。

企業就職の一般的な就職活動

  • 自己分析や業界企業研究などエントリー前の準備を行う
  • 応募したい企業群を絞り、エントリーシートや研究概要書を提出する
  • 複数回の面接(技術面接含む)や筆記試験など、複数の選考ステップを経て内定へ
  • 企業を知る上でも選考の優位性を確保する上でも、インターンシップの重要性が高い
  • 研究の専門性だけでなく、コミュニケーション力やチームワークを含むトランスファラブルスキルが評価される
  • 日本はメンバーシップ型雇用(企業が特定の職務ではなく、長期的な育成を前提に人材を採用する方式)が主流なことから、応募者の人柄や価値観が企業に合うかも重視される

アカデミアの一般的な就職活動

  • 研究テーマの一致度が高い求人を探したり、研究室の先生や知人からの紹介を受ける
  • 日本学術振興会をはじめとした、研究テーマの制約が少ない研究員採用制度もある
  • 応募する求人を決め、履歴書、研究概要、研究業績等を提出する
  • 面接の回数はポストによって異なるが一般的に企業よりも少ない傾向にある
  • 研究分野によってポストの競争率が異なる
  • 学術業績(論文数・インパクトファクターなど)が重視される

どちらのキャリアを選ぶにしても、早い段階で情報を集め、自分の強みや興味に合った道を考えることがとても大切です。

就職活動は効率的に!研究と両立するための3つのコツ

博士学生は研究と並行して就職活動を進める必要があります。効率的に民間企業就活を進めるための3つのコツを紹介します。

1. 企業研究を効率化する

企業選びに時間をかけすぎると、研究に影響が出ることも。パソコンを前にして際限なく情報を集めるやり方はおすすめできません。興味のある分野を絞り、複数社が参加するキャリアイベントやOB・OG訪問や企業説明会に参加して、短期間でできるだけ最新の情報を収集しましょう。企業の担当者と話せる機会は、組織の雰囲気なども知ることができるので是非活用してください。

2. 早い段階で各種締切を確認し、就職活動の計画を立てる

企業の就職活動は、多くの場合学位取得の見込みが確実となるより前にスタートします。
うっかりしていると重要な締め切りを簡単に逃してしまうため、博士課程2年の春頃には早期選考、インターンシップをはじめ各種のエントリー締切を調べておきましょう。早い動き出しが、結果として短期集中の効率的な就職活動に繋がります。また、就職活動に過度に時間をかけすぎないよう、一週間のうち決まった時間のみを就職活動に費やす、といった計画を立てておくことで、その他の時間を安心して研究に使うことができます。

3. 指導教員等とのコミュニケーションを取る

指導教員や周囲のメンバーに自分の希望する進路について共有する、インターンシップに参加する際には指導教員と前後の研究計画を相談する、学位取得との両立について随時状況を共有し、相談しながら研究を進めるなどの工夫を可能な限り行いましょう。就職活動に注力している時期は、研究の進捗など周りから心配されがちです。こまめに相談し理解を得ることにより、支援を得やすい状況を作りましょう。

まとめ

博士学生の民間企業就職には、計画的な準備が必要です。スケジュールを意識しながら、効率的に企業研究や選考対策を進めましょう。また、研究と両立するための工夫も欠かせません。自分の強みを活かし、納得のいくキャリア選択を目指しましょう。