Granite採択学生インタビュー

Materials Science

Granite 物質創成科学領域

マテリアルズインフォマティクス研究室美藤 大輝さん

あなたの研究テーマについて教えてください。What is your research theme?

26-20-01

私の研究テーマは「高分子の重合反応におけるプロセス設計」です。具体的には、温度や時間、原料の配合比率といった条件と、生成される高分子の組成との関係をモデル化し、AIを活用して最適なプロセス条件を予測・提案することを目指しています。

従来、目的の高分子を作るための反応条件は、研究者の経験や勘を頼りに試行錯誤しながら探すのが一般的でした。しかし、実験にかかる時間・コスト・人的資源の負担は大きく、検討できる反応条件に限りがあります。そこで私の研究では反応条件と高分子の組成の関係をモデル化し、実験データがなくてもさまざまな反応条件から一定の法則の下で組成を予測して、最適なプロセス条件を見つけ出します。この論理的かつ効率的なアプローチは、従来の実験の負担を軽減し、より広範囲の条件を検討してさらに好ましいプロセス条件を提案できる点で社会的に意義があります。

もともと修士までは無機材料が専門でしたが、社会人として再進学するにあたり「化学×AI」という最先端の領域で自分の幅を広げたいと考え、実績のあった今の研究室を選びました。AIは強力なツールですが、物理法則を無視した予測結果を示したり、学習していない未知条件に対しては予測が難しいなど、使い方に工夫が必要です。そのため、AIと人間の役割分担をどう設計するかに面白さを感じています。

なぜ博士課程へ進学しましたか?Why did you decide to pursue a doctoral program?

26-20-02

修士課程の当時は博士進学を全く考えておらず、まずは「メーカーでモノがどう作られているのか」を現場で学びたいと思い、民間企業へ就職しました。

7年間、電池材料の開発や設計に携わる中で大きな転機がありました。現場では経験や勘に頼る場面も多く、AIやデータを活用した効率的な研究への移行が不可欠だと痛感しました。しかし、社内にはそうした最新のスキルを学べる部署がありませんでした。「データ駆動型のアプローチを身につけなければ、研究者としての価値を発揮し続けられない」という強い危機感を抱いたのが進学のきっかけです。

単なるスキルの習得なら独学でも可能かもしれませんが、化学とAIを高度に融合させ、解析から確かな知見を引き出すには専門的な教育と研究実績が必要です。また、企業の研究所で活躍する管理職には博士号保持者が多く、キャリア形成の観点からも博士号の取得が必要だと判断しました。退職という大きな決断でしたが、研究者としての選択肢と将来の可能性を広げるために一歩を踏み出しました。一度社会に出て現場の課題感を経験したからこそ、明確な目的意識を持って研究に没頭できています。

Graniteの支援で役立っている・助かっていることを教えてください。Please share what has been helpful or beneficial through the support provided by Granite.

退職して博士課程へ進学したため、Graniteの金銭的な支援には特に助けられています。採択されていなければ、生活費への不安が常に頭にあり、日々プレッシャーを感じながら研究することになっていたと思います。支援によってその不安が軽減され、研究に集中できる環境を得られたことが一番大きな点です。研究費については、今後、学会参加などに活用できればと考えています。また、トランスファラブルスキルを伸ばすプログラムにも今後参加し、研究を進める力だけでなく、研究者として必要になる幅広い能力を身につけたいと考えています。

将来の目標、もしくはあなたが胸に秘めた野望があればぜひ教えてください。Please share your future goals or any ambitions you hold close to your heart.

将来は、これまで培ってきた「実験化学者としての泥臭い現場経験」と、博士課程で身につけた「データ駆動型の研究手法」の両方を活かせる企業で活躍したいです。

目標は、実験化学者とデータサイエンティストの間に立ち、双方の考え方を理解して橋渡しができる存在になることです。10年後には、双方の専門性を融合させて組織を牽引し、これまでにない革新的な新材料や生産プロセスを生み出したいです。

博士課程進学を考えている人へのメッセージをください。Please share a message for those considering pursuing a doctoral program.

26-20-03

社会人博士として働きながら研究できる環境があれば、無理に退職する必要はありません。ただ、「現在の環境では希望する研究に挑戦できない」「仕事との両立では研究に没頭しきれない」と感じているなら、退職して博士研究に専念するのも価値ある選択肢です。

大学での研究は企業のようなチームプレイと異なり、個人の裁量が大きい分、孤立しやすい一面もあります。だからこそ、すべてを一人で抱え込まず、必要な助けや協力を自分から周囲に求める姿勢が大切です。「伝える努力(言語化)」をして自発的に周囲を巻き込むことも、研究をリードする重要な能力の一つだと実感しています。

失敗や試行錯誤を自分の糧とし、目標に向かって進み続ける覚悟がある人にとって、博士課程での挑戦は将来の大きな財産になるはずです。